活動報告 - 俳句同好会 (白木蓮俳句会) (H.30.10.13日) No.104
◆句会は原則として毎月第2土曜日の午後1時から3時40分まで、主として久我山会館・高井戸地域区民センター等で開催しております。(出席者は10名程度)一度ふらっと覗いてみて下さい。その上で、ぜひ仲間になって下さい。
句会が終わると駅前の蕎麦屋でちょこっとやったりもします。
◆毎回、その月の作品を紹介いたします。
・10月の作品の紹介
・10月の兼題は、「秋刀魚」・「当季雑詠」で3句です。
出題:安西 円覚
選句:俵木 陶光
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・風の日は風吹きすさぶ秋刀魚の値 石田波郷
・誰彼に及ばぬ才や秋刀魚焼く 石田あき子
・忿(いか)り頭を離れず秋刀魚焼きけぶらし 三橋鷹女
・秋刀魚けぶらせをりショパン聞いてをり 結城昌治
・すぐ帰る秋刀魚の旬を今買った 川崎展宏
・そらんずる秋刀魚の詩ありさんま焼く 橘 久枝
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俵木 陶光
・銀(しろがね)の秋刀魚網よりどつと落つ
岡村 一道
・秋深むどこを打ちても音乾く
芳村 翡翠
・秋刀魚焼く独り所帯の厨ごと
片山 朝陽
・秋刀魚焼く単身赴任の夫帰る
安西 円覚
・琅玕 (ろうかん)の葉音さやかに夜長かな
長岡 帰山
・天空は神の畑の鰯雲
中邑 雅子
・みちのくの海の色せる秋刀魚かな
小林 美絵子
・母とゆく鈴虫寺の賑わいに
坂井 百合子
・嵐去り木犀香る路面かな
菊池 幸
・寝不足の秋をゆさぶる夜半の風
五井 夢
・さんま焦げ煙となりて青に溶け
山下 天真
・木刀の風切る音や秋さやか
堀 秀堂
・百歳へ秋刀魚の命戴きて
村林 小枝子
・秋刀魚焼く夕餉の皿に月あかり
山路 久美子
・満月のとけてたゆとう伊豆の海
荻須 節子
・五時の鐘さんまの煙流れくる
◆<私の一句>
さんまさんま「秋刀魚の歌」にさんま焼く
俵木 陶光
昨年は秋刀魚を1尾も食べられなかったが、今年は食べまくっている。
詩人佐藤春夫は秋刀魚を介在として親友であった小説家谷崎潤一郎と一人の女性について遣る瀬ない気持をこの「秋刀魚の歌」の詩にぶっつけている。2人とも文化勲章の受章者であり、谷崎の方が5歳ほど上である。
谷崎35歳のころ妻千代(子)とあまりうまくいっていないので20歳年下の丁未子と暮らし始め上々であった。佐藤は千代子夫人を強く慕っていたし、彼女の祖母に「若し谷崎がお千代さんを欺くようならば、いつでも引きとりにきますよ」と言っていた。谷崎もこの件について佐藤に焚き付けるようでもあった。。
しかし気になるので知人に相談したところ、形の上だけでも本妻としたらということになった。しかしその気になっていた佐藤にとっては裏切られたことになり、しばらくは絶交状態が続いた。
週刊誌的なことであるが谷崎の33ページに渡る「佐藤春夫に与へて過去半生を語る書」に出ている。その書き出しはこうだ。「佐藤君僕は昔からセンチメンタリズムの嫌いな人間だ」。
佐藤も「秋刀魚の歌」の中に胸を掻き毟られるような気持で書いたに違いない。男女の結合が軽々しく行われていたとは驚きであるが、これも小説としての作品の一つなのかも知れない。谷崎の作品には「痴人の愛」「春琴抄」「細雪」などがある。
一方離婚の経験者でもある佐藤はこう言っている。「詩人は不幸に泣く時すぐれた歌をつくる。女性は悲しみに沈んでいる時貴(あて)にうつくし」。さて千代夫人はどうだったのであろうか。
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秋刀魚の歌 佐藤 春夫 (一部)
あはれ 秋風よ 情(こころ)あらば伝えてよ//
__ __男ありて今日の夕餉に ひとり
さんまを食(くら)ひて思ひにふける と。・・・・・
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児は・・・
・・・・・
あはれ 秋風よ
情(こころ)あらば伝えてよ、
・・・・・
さんま、さんま、
さんま苦(にが)いか塩つぱいか。
・・・・・
◆次回の定例句会は、11月10日(土)13時〜15時40分
於浜田山会館
※浜田山会館が分からない方は、浜田山駅改札口に12時50分に集まってくだ さい。
兼題は、「立冬」・「当季雑詠」の3句提出
◆句会についてのお問い合わせ先: 安西 光昭(円覚)まで
TEL 090-3145-2654
◆文責: 俵木 敏光(陶光)